西川嘉廣さん
西川嘉右衛門商店会長

  ヨシ博物館とは? 
第162回

五感にヨシ

2006年8月24日 菱川貞義

 舟を降りると、奥田さんはいいました。

 ヨシキリの巣にちょうど赤ちゃんが生まれているからいっしょに見に行きましょう。

 ヨシキリの巣は元気なヨシ原のなかにあります。そーっと近づいてみると、

ヨシキリ

あ、いました、いました。ヨシ原のなかを歩くとガサガサとかなり騒々しいのに、ヨシキリの赤ちゃんはなんだか安心しきっているように眠っていました。ヨシ原のなかにいると外敵からしっかり隠れることができるようです。

 そして6月29日、元気に4mも成長し、どこにヨシキリの巣があるか皆目分からないヨシ原のとなりで、長かった田植えがようやく終わりました。植え終わっても、よーく目をこらさないとイネに気がつきません。

ヨシキリ ヨシキリ

 余ったイネの背丈を測ってみると、だいたい40cmでした。ちょうどヨシの10分の1の長さです。

 そこへ奥田さんがやって来て、田植えを開始した日と同じように、田植えが終わったご褒美にぼくたちを舟に乗せてくれました。

ヨシキリ
西の湖 西の湖

西の湖

 10日前と比べても、いよいよヨシは元気さを増していました。実は、奥田さんも年を重ねてどんどん若返っているんじゃないか、という気がしています。

 田植えをしていても、とっくに気づいていることなのですが、ヨシ原のそばにいると、葉擦れの音やヨシキリの鳴き声がほんとうに心を落ち着かせてくれます。

 そして暑い夏の日でも、ヨシ原のそばはとても涼しいのです。ヨシキリにしても人間にしても、ヨシ原はそばにいる生き物に、十分な癒しや安心感を与えているようです。
(つづく)