大谷利男さん
住民活動促進委員会
委員長(野洲町)

第7回 視野を広げて能力を活かす(その2)
2003年4月24日 畑佐 実
 例えば“先生”という言葉です。「わしはあんたらよりも先に生まれたから、先生や。」これはよく使いますよ。ところがほんとはそういう意味じゃない。私は“先を生きる人”という意味やと思いますよ。同じ字であっても“先に生まれる”と読むか、“先を生きる”かで全然違う。一歩先を生きているのであれば、リーダーの素質をしっかりと持った人であるはずです。言葉というのはちょっと視点を変えて見れば同じ字であってもそれだけの開きが出てくる。後者の意味を取ってくると非常に価値の高いものになってくるし、前者の意味だと遊びの言葉づかいにしかならない。

─── 野洲の人たちは大谷先生とお呼びしますけど。

 みんな私のことを先生と呼ぶけど、それはかつて小学校の教師をやってたからなんですよ。最後は守山の速野小学校の教頭をしていました。だから、みんながそう呼ぶんですよ、私は言うなというんだけど。私というものをみんな知ってるから、これは尊敬の先生でもなんでもないんです(笑)。昔、学校の先生をしていただけのことなんです。

─── 守山の速野小学校と言えば、環境学習に熱心な学校だと聞いてますよ。

 今やってますか?そうですか。私がいた時は、勤労生産学習というのをしていました。米や芋を作ったり、豆を植えたりとかね。これも環境学習のひとつやけど、もう随分と前の話やからね。今は新しい感覚で環境問題に取り組んでいると思いますけど、それはちょっと私にはわからないですね。

 私は環境のことに関してはNPO法人を取得した〈環境を考える会〉の会員にもなっているんですよ。代表の菅谷多美子さんは環境講座の講師をされていてね、ずっと水問題について取り組んでおられるんですよ。私はあの方から水問題を随分勉強させてもらいました。菅谷さんはいろんな活動を通じて話も豊富だから、あんたも話を聞きにいくといいですよ。

─── はい、是非そうさせていただきます。大谷さんご自身、ずいぶん地域参加されていますね。

 これも私が関わっていることなんですけど、2年ほど前に〈野洲メンズクラブ〉という団体を立ち上げたんですよ。これは何をするのかというと、男女共同参画社会の勉強をしていこうやないかと男ばかり10人程集まったんです。毎月1回公民館に寄って話し合うんですよ。初めの間は「そんなこと言うたって男と女は違うんやさけ。」と通俗的なことを喋っていたんですよ。ところがビデオを見たり、本を読んだり、あるいは条例がでたことを話題にしているうちに〈メンズクラブ〉いうのおかしいのと違うか、と思うようになりました。男だけが男女共同参画の問題を考えてここで議論したってあかん、女性の方にも入ってもらって女性の立場で意見を言うてもらわなあかんのと違うかと。そのようにメンバーの質が変わってきたんですよ。決して高慢な理屈でもって議論したわけではないです。まだまだ男女共同参画の理念からするとほど遠いことを喋っているんですが、繰り返しているうちでそういう変化がでてくる。

 それなら〈メンズクラブ〉なんて名前やったら女の人が入りにくいから名前を変えなあかんなあ、というわけで、〈ききょうの会〉としました。そしてその頭に活動の中身がわかるように〈野洲男女共同参画をすすめる会(ききょうの会)〉という長ったらしい名前をつけたんです。普段の愛称は〈ききょうの会〉で。これは誰しも“ききょう”という花をイメージするんやけども、字で表すと「輝く・共に」の「輝共(ききょう)」なんです。男も女も共に輝くんやと。それが理念に合うやろと。それともうひとつはききょうの花の清廉なイメージがあるけど、後で花言葉を調べてみたら、ききょうの花言葉は“変わらぬ愛”ということなんです。これもね、男女のひとつの結びつきというのか、別に男と女の関係に限らず、そういうものが変わらないことこそ男女同権平等だということです。こじつけみたいですけど。

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